2015-01-01から1年間の記事一覧

申年の印象

「申年の印象」 飛行場そばの用水路で、ぼくたちは頭上を降りてくる巨大なジェット機を眺めている。 ジェットエンジンの爆音の中で、友達は好きな女の子の名前を叫んだりしている。 中学二年生とはそういうものだ。 クラスメートの女の子がぼくに聞く。「人…

生活と小説 その6

その中華料理店というのは、駅前から少し歩いたところにあり、店員はみな中国系と思われ、広東風なのだか上海風なのだか北京風なのだか、細かいことはよく分からないが、とにかく安くて美味しいので、ヤマザキは三日に一度くらいは利用していたのだが、ある…

生活と小説 その5

サイゼリコは、ふとヤマザキに電話をしてみたくなる。 もしもしサイゼリコですが。「なんですか」。自分に自信が無いのです。「ああ、それは大変ですねえ」。ええ、大変です。「で?」。はい、どうすれば自信が持てるようになるのかなあ、と。「それをぼくに…

生活と小説 その4

宇宙の大きさが、今まで考えられていた大きさの三分の一しかなかった、と言われたところで、別にどうということはない、実は百倍だった、と言われても、どうでもいい。それからヤマザキは、布団に入りながら、天井についているLEDのランプをどう取り替え…

生活と小説 その3

ハタケヤマは自分が頭の良いタイプの人間ではない、ということをよく分かっていたから、ヤマザキのよく分からない話を、よく分からない人間なりに、よく分からないけど、きっと意味が分かると楽しいんでしょうね!といったような表情で聞いていたけれど、や…

生活と小説 その2

サイゼリコによると、冷麦の姉が彼氏をあの自称知性派アイドルに寝取られたというのは本当で、冷麦の姉は、あのアイドルが所属しているグループの幾人か、さらに他の複数のアイドルにも寝取られていて、要は、姉が寝取られたというよりも、彼氏がアイドルを…

生活と小説 その1

ヤマザキは西武新宿駅の改札を通ってから、地下街への階段を降りていて、薄暗い踊り場で座っているホームレスの横を通り過ぎる際に多少の罪悪感を抱いたり、急いでいる訳ではないのだけど、なんとなく小走りしたら汗ばんで、無印良品のグレーの半袖シャツに…